2つの震災を通して、地元の大切さに気付きました。

フェス, 東日本大震災 |
2016年 12月 2日




ボランティアストーリー030-01
普段は自分の気持ちを口に出すことの少ない白石さんですが、今回のインタビューでは質問ひとつひとつ丁寧にお話しして下さいました。
2011年から定期的に東北を訪れている白石さんは、東北に来るときはボランティアをするだけでなくその土地ならではの食べ物や場所を楽しんでいるようです。
2016年4月、白石さんの地元熊本では震災が起こりました。
「当たり前だと思っていたことが当たり前ではないということに気づいた」と話す白石さん。
何度も足を運んでいる東北への想い、そしていま、地元熊本についてどんな気持ちでいるのかを伺ってきました。

Q.東日本大震災前はボランティアをしていましたか?

ボランティアはしていませんでした。
東日本大震災前はボランティアに労働的なイメージを持っていて、ひどい言い方かもしれませんが、「主催者にこき使われて疲れるだけ」だと思っていました。
周りでやったことのある人もいなかったし、インターネットとかに書いてある情報しか知らなくて、あまりいいイメージはありませんでした。

Q.震災が起こったときはどこで何をしていましたか?

東京のオフィスで仕事をしていました。
大きな地震がきたなっていう感覚だけで、震源地の東北のことよりも、自分が家に帰れるかなという心配をしていました。
その日は、都内の電車は止まっていたので家まで4~5時間かけて歩いて帰りました。
家に帰ってテレビを見て、東北で何が起きているのかがやっとわかって、映画を見ているような感じでした。これが現実なのだと落ち込みました。

Q.震災後初めて参加したボランティアはいつ何でしたか?

東日本大震災から半年後の2011年9月の3連休のときでした。
インターネットでボランティア募集情報を検索し、旅行会社が募集しているボランティアに応募して、宮城県南三陸町でがれき撤去をしました。

Q.震災前はボランティアにいいイメージを持っていなかったのに参加しようとしたきっかけは何かありましたか?

震災関連のニュースを見て、自分にできることは何かないだろうかと考えるようになり、周りからどう思われてもいいから、行動して自分が感じたことを人に伝えたいって思うようになりました。
ボランティアに行った9月は、横浜でAIR JAM 2011が開催された時でした。
東日本大震災が起こった1か月後、主催のHi-STANDARD(以下、ハイスタ)のメンバーが被災地に対して、「届け!!!」とツイートしていたことが心に残っていて、ライブのチケットは取れなかったけど、実際に現地(東北)に行って自分の想いを届けたいと思い、南三陸町へ向かいました。
僕はそれまで行動的な方ではなかったのですが、東日本大震災が起こって「行動する」という大切さをすごく感じました。ハイスタが僕の背中を押してくれました。
初めて南三陸町で見た景色は一生忘れられません。

ボランティアストーリー030-11

Q.それはどんな景色でしたか?

僕が初めて南三陸町に行ったときは、まだ海の近くにがれきの山があって、家屋も崩れたまま残っていました。
だけど、自然がすごくきれいで。被災した様子だけでなく町の景色すべてを含めて印象的でした。
僕はボランティアに行った時が人生初の東北で、リアス式海岸を見たのも初めてでした。
本当に穏やかな海で、ここで津波が起こったのかと信じられませんでした。

Q.何度も東北に足を運ぶ理由を教えてください

最初は、何か行動しないといけないと思ってボランティアに参加していたのですが、行くたびに東北の人の温かさを知り、親しみを感じるようになりました。
深く知ることで好きな街が増えていきます。
東北は人柄、街並み、ごはん、お酒、いいものが揃っている場所です。
震災ですべてを失っても地元で頑張っている人や、新しく東北に住んで仕事や生活を始める人がいて、東北には人を惹きつける力があるなと感じました。
今は、友達のために東北に行きたいという感じですね。

Q.東北の好きな場所や好きなものを教えてください

石巻市は、美味しい食べ物が豊富で、行くたびに好きな場所が増えます。
特に僕が好きなのは石巻の亀鶴食堂のタレカツです。おすすめです!

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あとは、気仙沼市。2014年から気仙沼サンマフェスティバルに語り部付きのバスツアーを利用して参加しているのですが、南三陸町~気仙沼までを毎年同じコースを回って案内してもらえるので1年ごとのまちの変化を感じます。新たな発見もあって、復興していくかたちを見ることができています。
サンマフェスにはボランティアで行っていますが、夜は気仙沼のまちやご飯を楽しんでします。
地方に行ったときは現地のものを食べるようにしているんですけど、僕の地元では見たことのない食べ物があったり、その土地ならではの美味しいものがたくさんあって楽しいです。

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Q.ボランティアをするようになって変わったことはありますか?

イベントのボランティアでゴミ担当をすることがあることがあるので、日常生活でも自然とゴミの分別することが身に付きました。
あとは、年齢に関係なく平等に人と接するようになりました。
僕は社会人になって九州を出たので、東京に友達が少なかったんですけど、横の繋がりもできて友達が増えました。
職場でも「明るくなったね」って言われます。自分自身では自分の変化に気づかないけれど、周りにそういう風に言ってもらえて嬉しいです。

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Q.何度も東北に足を運ぶ中、今年(2016年)4月に白石さんの地元熊本で地震が起きましたよね。地震が起きた時の心境を教えてください

自分が小さい頃から「30年後に地震がくる」と言われていたので、やっぱり地震が来たかと思いました。
地震が起こった直後は、何も考えることができず家族の心配をしていました。
震源地である益城町は実家から車で20分程の町で、他人事ではなく、ニュースから流れるまちの様子に動揺していました。
翌日は仕事だったので、平常を装ったのですが、隠しきれず会社の人に心配されるほど動揺していたみたいです。正直あの日のことは覚えていません…。

Q.実際に熊本に帰ったときの状況を教えてください

地震が起きた週末にすぐ実家に帰ろうと思い、航空券を取っていたのですが、欠便になってしまい行くことができませんでした。震災後初めて帰ったのは半月後でした。
空港から実家へは車で30分くらいなのですが、通行止めになっている道もあり1時間ほどかかりました。
帰る道中で全壊している建物があったり、倒れかけている信号機があったり、馴染みの街並みが一瞬にして変わってしまい、すごく不思議な感じがしました。
当初は現地でボランティアをしようと思っていたのですが、あまりの変わりように無力さを感じて、何もできませんでした。
実家もまだ片付いていないところがあったので、家の中の片付けをして家族とゆっくり過ごしました。実家に帰ることができて本当によかったです。

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Q.熊本地震前と震災後の地元に対する気持ちの変化を教えてください

地震前は、熊本は単純に家族や友達がいるだけの場所としか思ってなかったし、実家があることが当たり前だと思っていました。
だけどそれまで僕が当たり前って思っていたことは、当たり前じゃなかったことに気づきました
自分の心のよりどころ、安心できる場所があるから、今まで自由に東北に行けたり、ボランティアできていたんだと思いました。
あと、東北の人も九州の人も、大きな災害が起こって失ったものが多くあっても、現地に住み続けている人たちがいて、地元愛という言葉だけでは片づけられない魂を感じるようになりました。
熊本地震を経験して、地元の大切さを認識しました

Q.12月23日にAIR JAM 2016が福岡で開催されますね。白石さんはボランティアで参加されるんですよね?

僕がこうやってボランティアを続けたり、東北に行くようになったり、音楽やライブが好きな友達が増えたのは、宮城で開催されたAIR JAM 2012やそのあとの東北ジャムにボランティアで行ったのが大きなきっかけでした。
大好きなハイスタが主催する、そして僕にきっかけを与えてくれたAIR JAMが福岡でやるって聞いたときはすごく嬉しかったし、九州で初めてボランティアをするチャンスがきたと思いました。

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Q.AIR JAMをきっかけに九州に来る人たちに対して思うことはありますか?

一番はお客さんやボランティアで来る人たちに、AIR JAMを楽しんでもらいたいなと思います。
次の日とか時間があれば、熊本とかの被害があった場所を自分の目で見てもらいたいと思います。できれば被害の大きかった阿蘇の方まで行ってもらいたいです。
あとは、九州を観光して現地の人に触れ合ってもらえたら嬉しいです。

Q.観光をしてもらいたいって気持ちが強いんですね

そうですね。もちろんボランティアをしてほしい気持ちもあるし、ボランティアするからわかることもたくさんあるけれど、ボランティアをするには時間も体力も必要なので、無理やりボランティアに来て辛い思いだけで帰ってしまわれるのは嫌なんです。
できるときに、その人が「したい」って思ったタイミングでしてもらいたいなって思います。

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僕は「また九州に来たい」って思ってもらいたいんです
観光で来て、被災地の状況をSNSで発信してくれるだけで他に繋がったりすると思うんです。
その人のSNSの投稿を見て「九州に行ってみようかな」「ボランティアに行ってみようかな」って思う人がいるかもしれないし、発信することで循環するって思います。
無理にボランティアしなくても発信だけでも十分なのでまずは来てほしいです!
熊本地震のニュースって関東に住んでいるともうほとんど目にすることがないんです。
行くことで感じることが絶対あるので、現地に行って感じて伝えてほしいです。

Q.今後どんな活動をして行きたいですか?

地元は一番好きな場所で、必ずこの場所を復興させたいという気持ちでいっぱいです。
復興支援というより、熊本の魅力を伝えたいです。
僕は小学生の時から熊本の城下町の雰囲気が大好きで、熊本を出てからは熊本城を見ると「家に帰ってきたな」と安心します。
震災で熊本城の瓦落ちていく瞬間や石垣が崩れていく様子をニュースで見てすごく悲しかったです。
熊本城が復旧したら復興したのかなと思うくらい、熊本の人にとって熊本城って熊本のシンボルだと思うんです。
熊本は必ず復興するって思っています。そのために僕も手伝いたいです

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↑ 熊本地震前の熊本城

Q.最後にこれを読んでいる人に伝えたいことはありますか?

さっきと重複するかもしれないけれど…。九州に、熊本に来てもらいたいです!
特に、東北の熊本に来たことのない人たちに来てもらいたくて、こんな素敵な場所があるんだと感じて欲しいです。
熊本地震後、僕が実家に帰ると知った東北の友達から「くまモンの帽子を買ってきてほしい」と連絡をもらいました。
彼は、その帽子を被って東北のフェスでボランティアをしてくれました。
九州と東北って同じ日本でも遠いし、他人ごとに感じる人もいるのかなって思っていたけれど、彼の行動を見て、自分のことのように思ってくれて、東北にも心配してくれる人がいるんだとわかって勇気づけられたし、本当に嬉しかったです。

ボランティアストーリー030-10

九州や熊本には、馬刺しや米焼酎、ラーメンなど美味しい食べ物や、観光地など魅力がたくさんある場所です。
なかなか来る機会がないと思うからこそ、一度、今の熊本を見てもらいたい。
そしてまたいつか「どこか旅行に行こうかな」ってなったときに熊本も行き先の候補地に入れてもらえたら…それだけで嬉しいです!

取材:田屋 由佳利
写真(一部):Moe Hasebe
プロフィール

ボランティアストーリー030-11 白石 勇太(28歳)
職業:会社員
住まい:神奈川県横浜市
出身:熊本県熊本市



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